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死刑執行について(T・H)

1月29日、日本政府はまたしても4人の死刑を執行しました。昨年12月18日に国連総会において2年連続となる死刑執行の停止を求める決議が採択された直後の死刑執行です。この死刑執行に対し、(社)アムネスティ・インターナショナル日本をはじめ死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90、日本弁護士連合会、「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク、日本カトリック正義と平和協議会死刑廃止をもとめる部会、イエズス会社会司牧センター、監獄人権センター(CPR)等々数多くの団体が抗議声明を発表しています。

現在、世界の70%が法律上又は事実上死刑を廃止しており、また、死刑をいまだ廃止していない国においても、その適用が減少傾向にある中で、日本のみが死刑の適用を拡大している姿は極めて異様に映ります。

今年の5月からいよいよ裁判員制度が始まりますが、死刑制度の存在は、裁判員制度の実施の大きな障害にもなっているようです。毎日新聞が実施した世論調査によると49%の人が裁判員制度に参加すると答えていますが、死刑判決にかかわることには63%もの人が反対と回答しています(1月28日付毎日新聞)。

一方で、2004年に行われた内閣府の調査では、81.4%の人が死刑の存置に賛成として日本政府の死刑制度を維持する根拠となっています。しかし、この調査は、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と「場合によっては死刑もやむを得ない」との設問からの選択となっており、死刑存置への強い誘導を感じさせます。

「国民の8割が死刑を支持」というフレーズが一人歩きをしていますが、意図的に死刑賛成の世論を作り出し、それを根拠に死刑の執行を重ねて既成事実とし、またそれをもとに死刑存置へ世論を誘導しているような気がしてなりません。

昨年、ジュネーブで行われた国連自由権規約委員会での報告書審査の場でも日本政府代表は、世論の支持を死刑存続の根拠として主張しましたが、委員会からは、「世論調査の結果にかかわらず、締約国は死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」(最終見解§16)と一蹴されました。委員の目にも日本政府の意図は明白だったように思います。

アムネスティ・インターナショナルは、昨年、国連において「死刑に関する判事及び検事の証言について」と題するシンポジウムを開催しました。日本からは冤罪の疑いが極めて高い袴田事件の第一審の裁判官の一人であった熊本典道元裁判官が参加し、裁判所の自白偏重の姿勢や、警察による無理な捜査による自白の強要など、日本の刑事司法の持つ問題点について発言しました。シンポジウムの記録は下記から閲覧可能です。
http://www.amnesty.or.jp/uploads/mydownloads/ny_testimonies_dp_kari.pdf

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死刑」カテゴリの記事

コメント

 T.H.さんからのご紹介でお邪魔しています。フランスが死刑を廃止したときの話ですが、その法案を出した当時の法務大臣、バダンテールさんから直接うかがった話では、廃止についてはとにかく無条件なんだということでやったそうです。要するに、正義を実現するための手段である司法制度に、人の命を奪うなどという非人道的な方法が組み入れられていていいはずはないという主旨です。社会の秩序を守るとか、正義を実現するといった目的を追求するためにどのような方法がいいのかは、死刑のない状態であらためて考えなくてはならないと思っていたといいます。
 バダンテールさんと一緒に死刑廃止のために働いていたトゥルニエさんという弁護士さんと話していたとき、死刑に抑止力はあるかどうかという話をする必要はない、とおっしゃっていました。「拷問に効果はあるかどうかという話をしますか? 企業競争力をつけるのに奴隷制は効果があるかどうかという話をしますか? 効果があるかどうか以前の話ではないですか?」
 というわけで、廃止のときの条件はまったくありませんでした。そのごかなりたってから、仮釈放のできない保安期間がついた刑がつくられました。たしか期間は20年だったと思います。
 廃止する前のフランス社会は、現在の日本社会とそうかわりません。メディアは殺人事件をセンセーショナルに報道し、被害者遺族を中心とした廃止反対の運動もあり、重大事件の裁かれる裁判所の外では群衆が集まって「死刑にしろ!」と叫び、死刑事件を弁護するバダンテールさんには脅迫状が送られ、爆弾を仕掛けられたりもしました。反対の意思は日本よりもっと強かったかもしれません。ですが、廃止してしまえば、一般の人の大多数は、文明国であれば死刑がないのが普通だと思うようになりました。死刑があるのは独裁的な国家だけだという認識のようです。被害者遺族の方の話も聞きましたが、「私が望むのは、犯人が捕まること、正しく裁かれること、そして、どうして娘が死ぬことになったのか、真実を知りたい」とおっしゃっていました。
 フランスでは、日本は文明国だと思われているので、死刑があると言うと一様に驚かれます。フランス人は、廃止前には62%も存置派がいたんだということも忘れているのかもしれません。
 このようなことでご質問への答えになったでしょうか?

投稿: mariko | 2009年2月 9日 (月) 10時14分

DHさん、失礼しました。

お尋ねの件については、私も詳しく承知していません。一度わかる人を捜して問い合わせてみたいと思います。
それにしてもいつも思うのですが、DHさんは大変よく勉強していらっしゃいますね。

管理人さん、申し訳ありません。その点についても私は十分な知識を持っていません。

確かにフランスが1981年に死刑を廃止した時は、世論の62%が死刑存置だったと記憶しています。廃止後は、死刑支持が低下したと聞いたように思いますが、詳しくは承知していません。
一昨年、憲法に死刑廃止を明記しましたのでフランスが死刑を復活することはないと思いますが、この間どのような対策等を取ったかについても不勉強でよく知りません。

この点についても一度詳しい人に訊いてみたいと思います。また分かれば報告をいたします。

投稿: T・H | 2009年2月 6日 (金) 22時43分

御返事ありがとうございます。

御紹介の報告は私も承知しています。
お尋ねしたのはそれではなく、下記のインターネット上でのアンケートの件です。

http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1423

http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1424

上記は中間報告なのでしょうか、それとも最終結果なのでしょうか。最終の集計であれば、賛成・反対等のパーセンテージなど全容を示してほしいところです。
私の知らない所で既に公表されているのかも知れないので、お尋ねした次第です。

投稿: DH | 2009年2月 6日 (金) 13時26分

そんなアンケートがあったのもWEB上で見られるのも知りませんでした。

T・Hさん、まえから聞きたいと思っていたことがあります。廃止国はどうしているのだろうか、ということです。

フランスでは世論を押し切る形で廃止されたと聞いたような気がします。
やめるにあたって国がした対策は(遺族援助、刑法など)はなんですか。そして今はフランス国民はどう思っているのでしょう?
他の廃止国でもけっこうですが。

投稿: 管理人 | 2009年2月 6日 (金) 00時51分

DHさんいつもご意見をありがとうございます。
極めて小規模なもので、あくまで参考にしかならないとは思いますがサイトには以下の報告が載っています。
http://homepage2.nifty.com/shihai/report/071027yoyogi/report.html

投稿: T・H | 2009年2月 5日 (木) 23時57分

こんばんは。

>死刑存置への強い誘導を感じさせます。

ならば、貴会が公正と判断する、「誘導」のない方法で独自にアンケートなり調査なりなさってみてはいかがでしょうか。

恐らく「潜在的廃止派もしくは死刑消極派は一般に信じられているよりはずっと多いはずだ」とお考えなのでしょうから、具体的データに基づいて批判する方がより説得力があると思います。

ところで、2007年頃だったと思いますが、アムネスティ日本のサイトで死刑に関するアンケートを実施していましたが、その最終結果は既に出ているのでしょうか(中間報告はあったようですが)。

仰るように政府の行う「世論調査」を鵜呑みにすることはできないと思います。政府というものは自身の都合によって「世論」を重視したり、無視したり、黙殺したりしますから。

でも、ただ「政府の調査など信用できない」と非難、否定するだけで、その「非真実性」を実証しないのであれば、貴会の主張に対する支持・共感も広まらないのではないかと思います。

投稿: DH | 2009年2月 5日 (木) 21時04分

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